記紀編纂者の時代観

記紀編纂者はどのように歴史を捉えていたか、表そうとしたか。
古事記、日本書紀に描かれる各時代の特性をまとめてみました。
単に伝わる話を選んだだけのものではなく、記紀の企画・構想がいかに考えられ、
優れているものかが分かります。

1.神話の世界
  天照大神が最高神、皇祖神として活躍する時代。
  天孫「ニニギ尊」への譲位は持統天皇の孫への譲位の正当化とも言われる。
  因みに持統天皇の和風諡号は高天原広野姫天皇(たかまのはらひろのひめ
  のすめらみこと)。

2.伝説の世界
  神武天皇から応神天皇
  皇家は天に繋がるとして神格性を求め、後の律令制において「王」のみ
  特別とした根拠ともなった。
  この時代には多くの氏族の祖が登場するが、仁徳以後はめっきりと減る。
  応神朝まで祖の登場に相応しい時代と見ていることが分かる。
  極めて伝説的な時代。

3.現世
(1)古代
  仁徳天皇から推古天皇
  上記2.で出現した氏姓による統治の時代で原始的な国家体制であったが
  伝説の世から各個人の顔がほのかに見え始める現世へと移行した時代であ
  った。

(2)近世
  舒明天皇から持統天皇
  仏教を君臣統合の論理として使ったが、天武天皇より律令制定を命ずる詔が
  発令され、701年大宝律令として完成した。
  国家建設事業が一つの到達点に至ったことを表し、国家史上の画期であった。
  律令制の根幹を成す「王土王民」、王のみは特別であるとする概念は、神の
  世界に天皇の系譜が繋がることで結実します。

712年に古事記、720年に日本書紀が成立します。
より強固な国家基盤を造り、永続的な平安を願う思いが記紀から見えてきます。
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