大君は 神にしませば 天雲の 雷(いかづち)の上に いほりせるかも 柿本人麻呂の万葉集に載る歌です。 天武・持統朝の頃に作られたと思われます。 興味深いのは天皇という人が神としてしっかりと描かれていること。 7世紀後半には「現つ神」(あきつかみ)という考え方が既にあったことが 分かります。 また天皇は雷という八百万の神の上から見ている、つまり神々にも上下の格が 認識されています。 これらの概念は記紀の企画・構想の根幹を成すものです。 霊魂観の成立と仏教の伝来による影響で、日本の神々の姿が変わりました。 それまでは存在しえない考え方です。 もしかすると梅原猛氏が言うように柿本人麻呂は記紀の基本構想を作った一人 であったのかも知れません。