海部氏系図を考える

少し固い話です。本ではこれだけスペースを割けなかったので補足として載せます。

1.卑弥呼の系図とも呼ばれる海部氏系図とは

天橋立の近くに籠(この)神社があります。そこで代々宮司を務める「海部氏」に伝わる系図
があります。
始祖は天照の孫である彦火明(ひこほあかり)命であり、その9世孫の意富那比(おほなひ)
命の妹は日女(ひめ)命、またの名を神大市姫命、倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそ
ひめ)命と記されています。
日本書紀に「崇神天皇10年 ヤマト・トトヒ・モモソ姫が死んで大市に葬りまつる」とあり、
これは奈良県桜井市にある三輪山に近い箸墓古墳とされます。宮内庁により「大市墓(おおい
ちのはか)の主はモモソ姫」として治定されています。
箸墓古墳といえば卑弥呼の墓の最有力候補です。このように卑弥呼をイメージさせることから
卑弥呼の系図と呼ぶ人もいます。
1975年6月に重要文化財、翌76年6月に国宝の指定を受けました。
因みに国宝指定となったのは記述される内容が正しいからというものではなく、日本の系図の
古態を示すためです。(念のため)
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2.各書の系譜の違いと秘匿されたわけ
 図は古事記、日本書紀に伝わる系譜と海部氏系図です。
各書の系譜

公開されてほどなく重文、国宝指定となりました。
なぜ長い年月、秘匿されてきたのでしょうか。
図の「日本書紀」の系図を見ていただくと良く分かります。
ニニギ命が天孫降臨しました。つまり高天原という天上界からやって来た、特に天照に繋がる
のは皇家の祖神だけとしているのです。
他の2書のようにホアカリ命も天から来たとすると、旦波(丹波・丹後の古名)を支配して
いた海部氏も天に直接つながってしまいます。
それを避けるためにホアカリ命はニニギ命が地上に降りた後に生まれたとしました。
現在の私たちの感覚では「大したことはないのでは?」と思いますが、「古代海部氏の系図」
(学生社)の著者 金久与市氏によれば「戦前までの日本では皇室の系図に抵触するようなも
のを公表すれば、不敬罪の対象ともなるので海部宮司家ではあえて秘蔵してきたのである」

日本書紀は人が読むために書かれました。皇家の神聖化を図り、正当性、権威づけのために
この点は譲れません。
古事記はこうした所は割と気にせずに書きます。
人が読んでどう思うかよりも大事にしていることがあるようです。
謎を解く一つの情報がここにあります。
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